「最悪、英単語さえ覚えておけば英語はなんとかなる。」という発言を聞いた事は無いだろうか。
確かに、確実に英語で点数を取れるようになるためには、文法や英文解釈の知識は必要だ。
だが、実際にそれらを理解していなくても、英単語さえ覚えていれば解ける問題は多い。
なぜなら、当たり前のことだが、英文は英単語を繋ぎ合わせることで出来ているからだ。
それほど、英語の学習において(というより、大学合格において)英単語を暗記する事は重要である。
英単語を覚えていなければ、英語で合格点を取る事は不可能だ。
しかし、受験合格に必要な英単語を十分に暗記せずに試験日を迎えてしまう受験生は意外にも多い。冒頭の発言は実際に合格した受験生が後輩に向けてよく発言する内容で、現役の受験生は英単語の学習を後回しにしてしまうケースが非常に多い。
それは、多くの学生にとって大学受験で使用する英単語が膨大な量であるように思えてしまうからである。また、単語帳も多数出版されており、どれだけの単語をどのレベルまで覚えれば良いのかーつまりーゴールが見えていないのである。
そこで、この記事では、私を含め多くの受験生が実際に難関大学に合格した英単語の勉強法をご紹介したい。
この通りに学習すれば、どの大学でも通用する単語力を身に付けることが可能だ。ぜひ信じて地道に実践して頂きたい。
英単語の具体的な暗記方法については「英単語の覚え方!短期間で早慶合格するために実践したオススメの英語暗記方法」で詳しくご紹介している。英単語の暗記が捗っていない人は一読してみよう。
1. 英単語学習の基本
1−1. 使用する単語帳について
基本的には大学受験用の単語帳であれば、どの単語帳を使用しても問題ない。
「英単語ターゲット1900 (旺文社)」や「システム英単語 (駿台受験シリーズ)」などのメジャーな単語帳(多くの受験生が使用しているもの)の中から自分に合ったものを選ぼう。
自分に合ったものと言っても、基本的にはどの単語帳にも同じ単語が収録されているため、「単語帳を繰り返し読む気になる」とか「読んでいてストレスにならない」という程度で十分だ。
とにかく何度も単語帳に触れ、暗記することが大事だからだ。
ちなみにNEOREC先進塾では、「英単語2001 BLISS (河合出版)」(以下、BLISS)をおすすめしている。
「BLISS」の良いところは、実際に試験問題で長文を読む際にスムーズに訳せるような実用的な訳を載せてくれているところだ。この単語帳に書かれている通りに単語を暗記するだけでも、ある程度の文章を日本語訳できるようになるので、効率が良い。
また、後述するが、英単語は実質、熟語の形で使用する(訳す)ことが大半だ。単体で訳すことはほぼ無い。この点、「BLISS」では実例に即した訳し方を掲載してくれているので、使い勝手が良い。
使用する単語帳はなんでも良いが、できれば「単語王2202(オー・メソッド出版)」などの分厚い単語帳は避けよう。大学受験レベルであれば、本当に必要な単語量はそれほど多くない。英単語の学習にかけられる時間は限られているので、できれば必要最低限の単語を”完璧に”暗記することを心がけよう。後述するが、実際の英文に使用される単語も偏っている。単語は量ではなく質が重要だということを覚えておこう。
1−2. 暗記の定義
ここで、「英単語の暗記」を定義しておきたい。NEOREC先進塾では次のように定義している。
これが実践で使える状態である。
英単語を見た時にいちいち考えなければならない状態では、暗記したことにはならない。
実践では全く使えないからだ。
必要な単語を全てこの状態にしておけば、長文を読むのに時間が足りないというような事態はおこらない。
英単語を暗記する時は、この状態をゴールとして考えよう。
1−3. 単語帳の全てを完璧に覚える必要はない。
続いて、必要な単語量についてだが、単語帳に載ってある単語を全て覚える必要はもちろん無い。
正確にいえば、覚えられるに越したことは無いが、覚えなくても合格は可能と云うことである。
では、どこを重点的に覚えれば良いのか。それは、単語帳の前半3分の2程度である。
試験問題の90パーセント以上が基礎問題で構成されているという話は以前にもご紹介したが、英単語においても同じことが言える。
大学受験で出題される英語長文のほとんどが基礎単語で構成されているのだ。
勘違いしている人が多いが、単語帳の前半から中間に掲載されている単語は「簡単な単語」ではなく、「頻度の高い単語(=重要な単語)」である。
であれば、そこを完璧に暗記していれば、大体の文章は読めるということになる。
難しい単語など存在しない。例えば「census(国勢調査)」も「apple(りんご)」も同じようにアルファベットを並べただけの単語である。「census(国勢調査)」が難しく感じるのは、単に使用頻度が少ないからである。早慶だから後半の単語がたくさん出るとか、日東駒専レベルであれば前半の単語が出やすいということも無い。前半→中間にかけての使用頻度の高い単語を先に定義したように完璧に暗記していれば、どの大学の英語でも単語力でつまずくことはまず無いだろう。
量を意識して、多くの単語に触れようとするのではなく、まずは使用頻度の高い基礎単語を何度も繰り返し、実践で使えるレベルまで引き上げることを意識しよう。
もちろん、単語帳に掲載されている単語を全てその状態まで持っていければ言うことなしだが、単語量を増やすのは、その他の項目が万全の状態になってからでも遅くはない。
2. 英単語学習の進め方
では、英単語学習を実際にどう進めていけば良いかという具体的な例をご紹介する。
今回はNEOREC先進塾がおすすめしている「BLISS」を例に説明するが、別の単語帳を使用している場合でも、同じ要領で学習すれば問題ない。
「BLISS」では単語を「スタート」「ダッシュ」「リード」「ゴール」の4つのレベルに分けている。「スタート」の単語が最も出題頻度が高く、基礎的な単語であり、「ゴール」が出題頻度の低い、いわゆる難度の高い単語である。
2−1. 必要なのはリードまで
最終目標として、リードまでの単語を完璧にしよう。
どの大学の英語でもリードまでの単語を完璧に暗記していれば、単語量が問題になることはない。
これに合わせて、文法や英文解釈の知識も完璧にしておけば、英語はまず合格点だ。
リードまでの分量は決して多くはない。誰でも暗記できる分量なので、必ず暗記しよう。
2−2. まずはスタート、ダッシュを完璧に。
スタートとダッシュの部分は早々に終わらせよう。
これらは必要最低限の単語で、文法や英文解釈の学習を効率よく進めるためにも必須だ。初めの段階で完璧に暗記しておこう。
集中すれば一ヶ月もかからない。
ここを乗り越えれば残りの学習が非常に楽になる。英語に苦手意識を持っている人や、いまいちイメージが掴めていない人も、この段階で英語が分かってくることが多い。
ここが最初にして一番の踏ん張りどころとも言える。
逆に、いつまで経っても英語の学習が進まない人や、英語が苦手だという受験生は、ここの単語を暗記できていないケースが多い。
それほど重要な単語なので、くれぐれも手を抜かず、早急に終わらせることを期待する。
2−3. スタートとダッシュが完璧になったら、リードを暗記する。
スタートとダッシュを完璧に暗記できたら、文法や英文解釈の暗記学習と並行して、リードの部分の暗記を始めよう。
イメージとしては、受験勉強を始めて1ヶ月ほどで、スタートとダッシュを完璧にし、3〜4カ月ほどで、リードを完璧にできれば順調だ。
また、文法や英文解釈の学習の際に、リードの単語が出てくることも多いので、この段階になれば文法や英文解釈の学習と並行してゆっくり覚えていく感覚の方が、ひたすら単語の暗記のみに集中するよりも効率が良い。
2−4. 受験後半にゴールの部分の単語を覚えよう。
ゴールの部分に関しては、完璧に覚える必要はなく、試験本番で出てきた時に、軽く思い出せる程度で良い。
スタート、ダッシュ、リードの単語が完璧に暗記できていれば、文脈と合わせて必ず意味が分かる状態になっているからだ。また、その単語の意味がわからない場合でも、大概の問題は解けるだろう。
もちろん、試験問題は特定の単語帳を参考にして作成されているわけではないので、ゴールの中にも良く出てくる単語はちらほら混じっている。
だが、そのような単語は英語の学習を進めていく上で、何度も目にすることになるので、受験後半にゴールの部分の単語の暗記に軽くでも取り組んでいれば、自然と暗記できるだろう。
3. 「熟語、イディオム」は単語とは区別せず、並行して学習を進めよう。
熟語と単語を区別して学習している受験生は多く、単語を学習してから応用的に熟語に取り組むよう指導している者もいるが、非常に効率が悪い。
なぜなら、文中で出てくる単語はほとんどの場合、熟語として出てくるからだ。
熟語の意味を問われたり、熟語として訳すことはあっても、単語単体での意味を問われることはほとんどない。
日本語で言うようなまさしく「熟語」という感じのイディオムは確かに複数存在するが、大学受験の参考書に出てくる熟語の形は、そういった類の「熟語」ではなく、単に単語の一般的な訳し方を固定しているにすぎない。
「この単語とこの前置詞がセットなら〜」「この単語とこの単語がセットなら〜」とパッケージ化しているだけである。
したがって、単語の学習と並行して、熟語の学習を進めることで、単語学習の効率が飛躍的に上がる。
単語帳で単語本来の意味や、多様語、用法などを覚えて、熟語の学習で実際の使い方を知るという感覚で良いだろう。
一つの単語にいろいろな意味がある場合が多いが、熟語を暗記していると、文を読む時にいちいち訳し方を考える必要がないので、便利である。
英熟語の学習手順については、「大学受験に英熟語は必要?英熟語・イディオムの効率的な勉強方法とオススメの参考書」でご紹介している。英熟語の勉強方法について知りたい方は、一度目を通しておこう。
まとめ
大学受験合格に必要な英単語の分量、暗記のレベル、そして具体的な進め方についての理解が深まったのであれば幸いに思う。
- 英単語を見た瞬間に日本語訳が頭の中に出てくる状態がゴールである事。
- 実はそれほど暗記量は多くない事。
- 量よりも質が大事だということ
- 基礎単語を先に固めることが重要であること
- イディオムと単語を区別せずに同時並行で学習すると効率が上がること。
以上5つを理解した上で、学習を進めれば、必ずどんな大学にも通用する単語力を身につけることが可能だ。
英単語は、完璧に暗記できていなければ意味が無い。使える状態の単語を確実にストックしていこう。
英単語の暗記は、恐らく受験勉強の中でも最も骨の折れる作業の一つだ。
それは皆同じで、決してすらすらと暗記できる人はいないということを覚えておこう。
英単語の暗記は、時間と労力がかかるものだと割り切り、一定の時間を確保し、逃げずにコツコツと取り組むようにしよう。
そうすれば、必ず、良い結果が待っているはずだ。