単語、文法、英文解釈(読解)に関しては、参考書も多く出版されており、学習方法や内容を説く授業も多い。
しかし、英熟語・イディオムに関しては、それ自体を専門に取り扱う授業や参考書が少ない。
そのため、受験生の中にも、英熟語の学習方法が分からない、もしくは、やる必要があるのか、そもそも何のためにするのか分からない、という者も多い。
実は大学受験の英熟語は、我々が「熟語」と聞いてイメージする類の熟語、とは少し色合いが違う。
大学受験の英熟語は、文法・語法問題でよく出る用法や、「単語+前置詞」などの形をフレーズとしてパッケージ化し、まとめたものにすぎない。
もちろん、まさに「熟語」というようなイディオムも複数存在するが、そのような覚えていないと分からないような語は、大抵文法問題集にも掲載されている。
つまり、熟語の学習は、そのほとんどが文法と単語の学習と内容が被っているということになる。
これが、英熟語・イディオムの学習指導が軽視されがちな要因の一つだ。
では、文法と単語さえ学習していれば、英熟語を学ぶ必要はないのか。と言われれば、そうではない。
この記事では、何のために英熟語を学ぶか。そして、その具体的な学習方法について説明する。
厳密に言えば「英熟語」と「イディオム」は異なる意味を持つが、大学受験においては、英熟語とイディオムを区別していないことが多く、区別することに何の意味も持たないので、この記事でも、「英熟語」と「イディオム」は同義の表現として扱う。
1. 英熟語の学習についての考え方
1-1. 英熟語を学習する意味
前述したように、英熟語の学習内容は文法、単語の学習と重複している。文法・語法の学習がしっかりとできた状態で、単語を覚えていれば、英熟語として認識していなくても、なんとか直訳して解答できることが多い。
しかし、「なんとか」という部分が問題だ。
果たして、単語や前置詞、副詞などの、見たことも無い組み合わせが試験本番で出題された際に、どれだけの人が「なんとか」直訳し、正しい訳をつけることができるだろうか。
また、英熟語によっては、語順が特殊なものも、多く存在する。整序や穴抜き問題ではそのような英熟語が狙われることが多い。一度も見たことがなければ、正答することはほぼ不可能に近いだろう。
つまり、英語科目の受験勉強のモレを無くし、万全の状態で試験に望むためには、英熟語の学習・対策が必要ということである。
また、文法や単語の知識を用いてその場で考えて解答する場合、たとえ正答できたとしても、必要以上に時間がかかってしまうことが多い。
一つのフレーズとして暗記していれば、整序や穴抜き問題でも、並んでいる語群を見ただけで、「あ、この熟語についての問題か」とすぐに気付くことができ、速く、正確に解答することができる。
よく出る文法知識や「単語+前置詞」などの形をフレーズとして認識し、暗記しておくことで、回答の精度や速度を高めるということも、英熟語を学習する意味、として十分だろう。
1-2. 学習を始めるタイミングは文法・語法の学習を終わらせた後が効率的
英熟語の学習は、文法・語法の学習を終わらせた後に始めることをオススメする。
文法・語法を学んだ状態であれば、英熟語を見た際に、なぜそのような意味になるのか、という理屈を理解した上で暗記を進められるからだ。
なぜ?が分かった状態の方が、やみくもに頭に詰め込むのよりも、スムーズに暗記ができるということは想像がつくはずだ。
文法・語法の学習方法については、「大学受験の英文法で満点を取るための確実でシンプルな学習方法」で詳しくご説明している。英文法の勉強方法について知りたい方は、ぜひ参考にして欲しい。
1-3. 単語の学習とは区別せず、並行して進めた方が効率的
熟語と単語を区別して学習している受験生は多く、単語を学習してから応用的に熟語に取り組むよう指導している者もいるが、非常に効率が悪い。なぜなら、文中で出てくる単語はほとんどの場合、熟語として出てくるからだ。
また、英単語には、一つの単語に複数の意味が含まれている場合が多い。文中で出てきた際には、どの意味を使っているのかを考える必要がある。その意味の使い分けの一つに、併用されている前置詞などの語句によるもの、がある。
熟語として、暗記していれば、いちいち考えることなく、スムーズに訳すことが可能になる。また、単語帳に掲載されている英単語の中には、イディオムとしてしか使用されない単語が多く含まれている。
英熟語の学習を、単語の学習と並行しておこなうことで、単語学習の効率を飛躍的に高めることができる。
英単語の学習方法や学習範囲、オススメの単語帳を知りたい方は「どんな大学でも合格できる英単語の勉強手順と、オススメの単語帳」を、英単語の効率的な暗記方法を知りたい方は「短期間で早慶に合格するために実践した英単語暗記方法」を、それぞれ読んでみよう。
2. 英熟語・イディオムの勉強方法
2-1. 英熟語・イディオムの勉強でオススメの参考書
NEOREC先進塾では「英熟語ターゲット1000(旺文社)」をおすすめしている。これ一冊で大学受験に必要な全ての熟語を網羅している。
使用する英熟語帳は「解体英熟語 (Z会)-風早寛」でも良い。どちらも掲載されている英熟語はほぼ同じだ。なお、こちらの英熟語帳もカード版が販売されているので、以下で紹介する学習方法で進めることが可能だ。書店で実際に手に取り、使いやすい(継続して取り組む気になる)と思う方を選ぼう。
2-2. 英熟語・イディオムの学習手順
2-2-1. 1日のノルマをきめる
1日100項目など、10日で全英熟語を一周できるくらいの分量がが望ましい。
2-2-2. 学習手順 | フラッシュカードを用いて学習する
下準備としてその日のノルマ分の英熟語を全てフラッシュカードに書き写そう。もし、面倒くさければ、「大学JUKEN新書カード英熟語ターゲット1000(旺文社)」を活用することをオススメする。「英熟語ターゲット1000」をあらかじめフラッシュカードの形にしてくれている教材だ。
① 1日のノルマのフラッシュカードを一周する。(この際に、一回目で答えられたカード(以下、Aグループ)と、答えられなかったカード(以下、Bグループ)に分ける)
② Bグループを全て答えられるようになるまでひたすら繰り返す。
③ 次の日に、前日のBグループ(手順②で暗記したカード)を再度一周する。(この際に、答えられるカード(そのままBグループ)と答えられなかったカード(以下、Cグループ)に分ける)
④ Cグループを全て答えられるようになるまでひたすら繰り返す。
⑤ その日のノルマ分のフラッシュカードで①〜②の手順をおこなう。
2-2-3. 復習のポイント
Aグループ=元々覚えていたか、あなたにとって非常に覚えやすい英熟語
→ 月に一度復習する
Bグループ=あなたにとって覚えやすい英熟語
→ 一週間に一度、復習する。
Cグループ=あなたにとって覚えにくい英熟語
→ 毎日復習する。
2-2-4. 1〜2ヶ月に一度、リセットする。
1ヶ月か2ヶ月に一度、再度①〜⑤の手順で、グループをリセットしよう。
そうすれば、BグループやCグループのカードが減っていき、復習の時間的負担が軽減されるはずだ。
まとめ
- 学習を開始するタイミングは、文法・語法の学習を一通り終わらせた後。
- 英単語の学習とは区別せずに、並行して取り組むこと。
これを踏まえた上で、紹介した学習方法を実践すれば、英熟語に関しては完璧だ。
冒頭で話したように、軽視されがちな英熟語だが、文法や単語で学んだ知識を固めるためにも非常に大切な学習分野だ。
文法・語法で学んだ知識や、英単語を更に固め、実用化していくという感覚で学習しよう。